淀みに浮かぶ泡沫は

大学院生の日常

日記

今日はギリギリ午前に家を出て大学へ.水曜の夜がほとんど徹夜状態だったので,今日はゆっくり眠りました.それでも9時くらいになると勝手に目が開いたので不思議.

午後から学部生のセミナーの指導補助があったので,それに間に合うように大学へ行きました.明らかに頭が働いておらず,間違ったことを言いかけたり説明がまごついたりで学生には少々迷惑をかけてしまった感じがあり申し訳ないです.セミナーのテーマは積分方程式で,今日はいわゆる Hilbert-Schmidt の定理などでした.それっていわゆるスペクトル分解定理というもので,線型代数で習ったんじゃないですか?などとコメントしたものの反応が薄かったので前に出て説明しようとしたら何故かグタグタになってしまうくらいにはポンコツでした.反省の意を込めて証明を書いておくことにします.

セミナーが結構長引きましたが,終わったあとはすぐに切り上げて大阪へ.日食なつこさんの全国ツアー「蒐集大行脚」のためです.実はライブというものに参加するのは初めてだったのですが,なるほどこれは人々がライブに行きたがるのも頷けるなという感想を抱きました.演出やその場の空気はもちろんのこと,音楽のエネルギーを全身で浴びれて感動しました.曲のチョイス(セトリって言うんですっけ)も素晴らしかったですし,最後の新曲も無茶苦茶よかったです.

それではまた.

 

2023年3月3日

 

おまけ:対称行列のスペクトル分解

 n 次実正方行列 A は対称行列であるとします.すなわち, {}^tA A の転置行列を表すとき ^tA=Aが成り立つとします.このとき A 固有値 \lambda_1, \ldots, \lambda_nは実数であり,対応する固有ベクトル v_1,\ldots,v_n \mathbb{R}^nの正規直交基底となるものが存在します.\mathbb{R}^nの標準内積 ( \cdot , \cdot)とするとき,任意の u \in \mathbb{R}^n に対して

 \displaystyle Au=\sum_{i=1}^n\lambda_i (u,v_i)v_i

 が成り立ちます.これを対称行列のスペクトル分解といいます.以下ではこの証明を与えます.

まず対称行列 Aを対角化します. P=(v_1 \ldots v_n)は直交行列であり, P^{-1}={}^tPであることに注意すると, \Lambda=\mathrm{diag}(\lambda_1,\ldots,\lambda_n)として A=P \Lambda ^tPが成り立ちます.  e_i \in \mathbb{R}^nは第 i成分のみが 1でほかは 0であるベクトルとすれば, e_i {}^te_i \in M_n(\mathbb{R})(i,j)成分のみが1でそのほかは0である n次正方行列を表します.よって,

 \displaystyle Au=\sum_{i=1}^n \lambda_i Pe_i {}^te_i {}^tPu=\sum_{i=1}^n \lambda_i (Pe_i){}^t(Pe_i)u=\sum_{i=1}^n \lambda_i v_i{}^tv_iu=\sum_{i=1}^n \lambda_iv_i(v_i,u)

を得ます.これで証明が完了しました.エルミート行列の場合にも同様の定理が証明できますが,複素共役をつけるのが面倒だったので実の場合だけにしておきました.