淀みに浮かぶ泡沫は

大学院生の日常

日記

今日は朝から大学へ.昨晩早めに就寝したおかげか,今日は6時過ぎには起きました.しばらくだらっとしていて動き出すのが遅かったですが,お弁当を作って家を出ました.

大学に着いてからは調べ物をしていました.先日の学部生のセミナーで自分がしたコメントに関係して,このところずっと気になっていることがあります.さっさと終わるだろうと思って自分で考えたり調べたりを始めたら思いのほか時間がかかってしまいました.ちなみに調べていたのは以下のことです(専門的な話ですので興味のない方は適当に飛ばしてください).

 


函数解析学において,次の主張はRiesz の補題と呼ばれます.

Riesz の補題  X は Banach 空間で  Y\subsetneq Xは閉部分空間とする.このとき,任意の  0 \lt \alpha \lt 1 に対して, \| x\|_X=1 かつ  d(x,Y) \geq \alphaを満たす x \in Xが存在する.ここで, d(x,Y)=\inf_{y\in Y} \|x-y\|_Xである.

 X が Hilbert 空間であれば直交射影を用いることができ,Riesz の補題において  \alpha=1 とした主張が成り立ちます. X が Banach 空間の場合,一般には  \alpha=1 とは取れないのですが,この反例などについて考えていました.色々調べた結果, X の単位球面上で最大値を達成しない  X 上の有界線型汎函数が存在する場合には,その零空間を  Y とすることで, \|x\|_X=1なる任意の  x \in X に対して  d(x, Y) \lt 1 となることがわかりました.そうするとそのような汎函数の存在条件が気になりますが,これは James の定理によれば X の反射性と同値なようです.

James の定理  X は Banach 空間で, C \subset X有界な弱閉集合とする.このとき次の2条件は同値である:
(a)  C は弱コンパクト集合である.
(b)  X 上の任意の有界線型汎関数 C 上で最大値を取る.

Banach 空間の反射性は単位閉球の弱コンパクト性と同値だったことを思い出しましょう.そうすると反射的ではない Banach 空間においては Riesz の補題 \alpha=1 として成り立たない閉部分空間  Y が必ず存在することになります.しかしこれまでの議論では,反射的 Banach 空間において  \alpha=1 とできない閉部分空間 Y の非存在性を示したことにはなっていません.このことについて何かご存知の方がいらっしゃればご教授いただければと思います.


 

調べ物に時間がかかって今日はあまり作業が進みませんでした.にもかかわらず調べたことをブログに書こうとしてさらに時間を食ったのはもっと愚かなんですね.メモしておくのは大事なんですけど.今週乗り切れるかしら.

明日は午前中に少し用事があって,それを終えてから大学へ行きます.

それではまた.

 

2022年6月12日